ポマトっていったい何?
この名前を聞いて、多くの人が驚くかもしれませんね。
ポマトは、ジャガイモとトマト、二つの異なる野菜が一体となった新しい品種です。
地上ではトマトが実り、地下ではジャガイモが育つという、一見信じがたい特性を持っています。
この記事では、そんなポマトの成り立ちから作り方、この野菜のメリットとデメリット、さらにはポマトの未来について詳しく解説します。
この驚きの野菜は、「細胞融合」という特殊技術によって生まれましたが、商業的には成功していないようです。
それでも、このような珍しい品種の存在自体が、農業や食文化に多大な影響を与える可能性を秘めていますよね。
そして、ポマトと同じような方法で作られた他の野菜や果物も紹介します。
この記事を通じて、ポマトやそれに類する新品種の興味深さと、未来の農業におけるその可能性について考えてみてくださいね。
ポマトとは何か?
ポマトは、トマトとジャガイモが一つの植物になった驚きの野菜です。
この特異な植物は、細胞融合(異なる種の細胞を合体させる技術)によって作られました。
具体的には、トマトとジャガイモの細胞を特定の酵素で処理し、その後、高濃度のポリエチレングリコール(PEG)を用いて細胞を融合させます。
このポマトは、1978年に西ドイツのG.メルヒャース氏によって開発されました。割りと古い歴史があるようですね。
地上部ではトマトが実り、地下ではジャガイモが育つという「一石二鳥の夢の野菜」のようですが、実際はトマトもジャガイモも小振りで、わざわざこちらを選ぶメリットはなさそうです。
もともとの目的は、暖地性のトマトにジャガイモの耐寒性を持たせることでした。
そのため、一見すると失敗作のようにも見えますが、耐寒性を持つトマトを作るという目的に関しては成功しています。
このような特殊な植物が作れるということ自体、バイオテクノロジー(生物学的手法を用いた技術)の驚異を感じさせますね。
トマト+じゃがいもは「トムテト」という名前で商品化も!
HAFFPOSTによると、2013年9月には「トムテト(TomTato)」という商品名で、発売開始となっています。
この野菜は、イギリスの園芸通販会社「トンプソン&モーガン」社が15年の歳月をかけて開発したそうです。
こちらは「接ぎ木(つぎき)」によって作られており、一般的なトマトより甘く、白いじゃがいももさまざまなお料理に合うようです。
ちなみに「接ぎ木」は、園芸の技術の一つで、植物の一部を切り取って別の植物に接合する方法です。この技術は主に、品種改良や植物の増殖を目的として利用されます。
1978年に開発されたものとは違うようですね。ジャガイモの茎にトマトをつないだものは「ジャガトマ」というらしいので、トムテトは、むしろこちらの方かもしれません。
2023年10月現在、まだ販売されていますが、出荷元がイギリスなので日本で手に入れるのは難しそうです。
同時期、ニュージーランドでも「Potato Tom」という品名で発売されたようですが、残念ながらこちらはすでに見つかりませんでした。
ポマトの作り方
ご家庭で作れるようなものではありませんが、ご紹介しておきます。適当に読み飛ばしてください。
- 細胞の選定: トマトとジャガイモの葉の細胞を選びます。
- 細胞壁の分解: 選定した細胞にセルラーゼ(細胞壁のセルロースを分解する酵素)を作用させ、細胞壁を分解します。
- プロトプラストの生成: 細胞壁が分解された状態の細胞、すなわちプロトプラスト(細胞壁を持たない細胞)が生成されます。
- 培養液の準備: 高濃度のポリエチレングリコール(PEG)を含む培養液を用意します。
- 細胞融合: プロトプラストを高濃度のPEGが含まれた培養液中で培養し、細胞同士を融合させます。
- 新細胞の生成: 細胞融合により、新しい一つの細胞が形成されます。
- 成長と収穫: 形成された新細胞を培養し、成長させます。地上ではトマトが、地下ではジャガイモが育つようになります。
- 評価と改良: 収穫されたトマトとジャガイモの品質を評価し、必要に応じて改良を行います。
このような手順を経て、ポマト(細胞融合により品種改良される野菜)は作られます。
ただし、このプロセスは専門的な知識と設備が必要ですので、一般の家庭での作成は難しいと言えます。
ポマトのメリットとデメリット
ポマトのメリット
- 多機能性: 地上ではトマトを、地下ではジャガイモを収穫できるため、一つの植物で二つの作物が得られます。見た目もおもしろいですよね。
- 耐寒性の向上: トマトにジャガイモの耐寒性が付与されるため、寒冷地でも栽培が可能になります。
- 農業の進化: 細胞融合技術を用いることで、新しい品種の開発が促進され、農業の多様性と可能性が広がります。
ポマトのデメリット
- 品質の問題: トマトもジャガイモも小振りで、どちらも未発達になる可能性が高いようです。これは光合成によって得られる養分が二つの作物に分配される理由のようです。
- 複雑な栽培条件: 細胞融合によって生まれた新品種は、特定の栽培条件下でしか生育しない場合があります。
- 未知のリスク: 可能性h低そうですが、細胞融合による品種改良は、未知のリスクが存在するかもしれません。
- 実用性の不足: これまでのところ、ポマトは商業的に成功していないとされています。そのため、さらに研究と開発が必要です。なお、「トムテト」は接ぎ木なので、別物と考えます。
以上のように、ポマトには魅力的な利点がありますが、同時に解決すべき課題もありますね。
ポマトの未来
ポマトは、その多機能性と耐寒性により、未来の農業において大きな可能性を秘めています。
しかし、現状ではポマトの商業的成功は限定的で、多くの課題が残されています。
品質の向上、栽培技術の確立、そして安全性の確保など、さらなる研究開発が期待されます。
特に、品質面での改良が進めば、ポマトは一般の家庭でもより広く受け入れられるでしょう。
将来的に身体への悪影響が一切ないと証明され、トマトとじゃがいも、どちらの味も単体のものと同程度になるのなら、とくに狭い庭を利用した家庭菜園で人気となりそうです。
他にも多数存在する細胞融合や接ぎ木によるハイブリット野菜
ポマト以外にも、細胞融合や接ぎ木によって作られた興味深い野菜や果物がいくつか存在します。
どうやら70種類以上はあるようです。ほとんど商品化されていません。
- オレタチ(オレンジ + カラタチ)
オレンジとカラタチ(おもに野生の柑橘類)を細胞融合させて作られました。カラタチも苦くて酸っぱいので生食できません。オレタチも食用には適しません。 - バイオハクラン(カンラン + ハクサイ)
カンラン(中国キャベツ)とハクサイ(白菜)を細胞融合させたものです。安全が確認され、商品化されています。歯ごたえはキャベツと白菜のほぼ中間で、歯切れがよく甘味があり柔らかいが、煮くずれしにくいそうです。 サラダや漬物などキャベツやハクサイと同じ使い方ができます。 - メロチャ(メロン + かぼちゃ)
メロンとかぼちゃを細胞融合させて作られた新品種です。販売はされていないようです。メロン、かぼちゃ、どちらも美味しいので、単体でかまわないかもしれません。 - ヒネ(ヒエ + イネ)
ヒエ(雑草の一種)とイネ(稲)を細胞融合させて作られました。 - エッグアンドチップス(ジャガイモ + ナス)
イギリスで開発されたジャガイモとナスの接ぎ木野菜です。ナスの英語がエッグプラント(egg plant)のため、このような品名になったのでしょう。
キャベコン(キャベツ+ダイコン)、ブロッコン(ブロッコリー+ダイコン)、ブロッコフラワー(ブロッコリー+カリフラワー)など、接ぎ木のハイブリッド野菜やフルーツもたくさんあります。
これらの新品種も、それぞれが持つ特性を活かし、新たな価値を生み出しています。
しかし、商業的に成功しているものは少なく、多くが研究段階か、限定的な市場での販売にとどまっています。
それでも、これらの新品種は農業や食文化に新たな可能性をもたらしており、今後の進展が期待されます。
参考:細胞融合と遺伝子組み換えの違い
細胞融合と遺伝子組み換えは、生物の特性を変えるための二つの異なる手法です。
細胞融合は、二つ以上の細胞を一つに融合させ、その両方の特性を持つ新しい細胞を作ります。
一方で、遺伝子組み換えは、特定の遺伝子を切り取り、別の生物のDNAに挿入することで、特定の特性だけを持つ生物を作ります。
細胞融合は通常、近縁種間で行われますが、遺伝子組み換えは種間、さらには動物と植物間でも可能です。
それぞれには特有のリスクと利点があります。
細胞融合(Cell Fusion)
- 定義: 細胞融合は、二つ以上の異なる細胞が一つになるプロセスです。
- 方法: 細胞壁を分解した後、細胞膜が融合し、新しい細胞が形成されます。
- 遺伝情報: 両方の細胞からの遺伝情報が結合されます。
- 適用範囲: 通常、近縁種または同種の細胞間で行われます。
- 特性: 両方の細胞の特性が新しい細胞に引き継がれます。
- リスク: 不安定な染色体数や不稔(繁殖できない状態)が生じる可能性があります。
遺伝子組み換え(Genetic Engineering)
- 定義: 遺伝子組み換えは、特定の遺伝子を切り取り、別の生物の遺伝子に挿入する技術です。
- 方法: 遺伝子を特定し、切り取ってから、目的とする生物のDNAに挿入します。
- 遺伝情報: 特定の遺伝子だけが移動します。
- 適用範囲: 種間、さらには動物と植物間でも可能です。
- 特性: 特定の遺伝子による特性だけが引き継がれます。
- リスク: 遺伝子が予期せぬ場所に挿入されると、不具合が生じる可能性があります。
ポマトにまつわるQ&A
Q1: ポマトはどのようにして作られるのですか?
ポマトは細胞融合(異なる種の細胞を合体させる技術)によって作られます。具体的な手法は、トマトとジャガイモの細胞壁を酵素で分解し、その後特定の化学物質を使って細胞を融合させるというものです。
Q2: ポマトはスーパーで買えますか?
現状、ポマトはスーパーでの販売はされていません。しかし、その特異な特性から将来的には商品化される可能性もあります。楽しみですね。
Q3: ポマトにはどんな利点と欠点がありますか?
ポマトの最大の利点は、一つの植物からトマトとジャガイモが収穫できる点です。耐寒性も備えています。
一方で、欠点としては、トマトもジャガイモも小振りで味もイマイチであるため、商業的な生産には向いていないとされています。
ポマトは夢が膨らむ未来の野菜
ポマトは、ジャガイモとトマトを細胞融合させて作られた新しい品種の野菜です。
このような新品種の開発は、農業の未来に多くの可能性をもたらしています。
ポマト自体は商業的には成功していないとされますが、その背景にある技術や研究は、今後の農業や食文化に対して新たな視点を提供しています。
また、ポマト以外にも細胞融合や遺伝子組み換え、接ぎ木によって作られた多くの新品種が存在し、それぞれが持つ独自の特性と利点があります。
これらのハイブリッド新品種がどのように社会や文化、そして経済に影響を与えるのかは今後の研究や実用化によって明らかにされるでしょう。