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カルピスロゴの変遷~昔の黒人男性のイラストは人種差別?デザイナーから歴史まで

カルピスロゴ

カルピスのロゴは、長い歴史の中でさまざまな変遷を経験してきました。

とくに注目されるのは、かつて使用されていた黒人男性のイラストが描かれたロゴマークです。

このロゴマークは、社会の変化とともに「人種差別的な表現」として問題視され、カルピス社が自主的にその使用を中止しました。

この記事では、カルピスのロゴと「黒人差別をなくす会」との関連、ロゴ変更の背景にある社会的変化、そして現代におけるカルピスロゴの意義について詳しく掘り下げていきます。

カルピスのロゴの歴史は、企業が社会の価値観や文化的感受性にどのように対応すべきか、そして時代の変化に応じたブランドイメージの更新の重要性を示す貴重な事例となっています。

カルピスの歴史的なロゴ=黒人男性のイラスト

カルピスの初期のロゴの由来

カルピスの初期のロゴは、1923年に採用されたもので、パナマ帽を被った黒人男性がカルピスを飲む姿を描いています。

このロゴは、カルピスのブランドイメージを形成する重要な要素となり、1990年まで使用されました。

カルピスのロゴのデザイナー

このロゴは、第一次世界大戦後の困窮するヨーロッパの画家たちを支援する目的で開催された国際懸賞ポスター展で、ドイツ人デザイナーのオットー・デュンケルスビューラー氏によってデザインされました。

オットー氏のデザインは第3位の作品だったようです。

ロゴマークは、当時の日本における国際的な視野と芸術への支援を象徴していました。

このコンテストは、カルピスの創業者で僧侶でもある三島海雲の友愛の精神から生まれたもので、単なる商業ロゴを超えた文化的な価値を持っていました。

なお、コンテストは外務省と提携して開催されました。

しかし、このロゴは後に人種差別的な要素を含むとの指摘を受けることになります。

黒人男性を描いた昔のカルピスのロゴの意味とは?

このロゴマークは、1923年から1990年まで使用されていたものでした。

カルピスの初期ロゴをデザインした際の意図については、差別的な意識はなかったと考えられます。

当時の日本においても、差別的な意図を持って作られたとは一般的には認識されていなかったようです。

  1. 当時の流行や文化的背景:1920年代の広告やアートでは、異文化を取り入れたデザインが流行していました。黒人のイラストを使用することは、当時の流行や興味を反映していた可能性があります。
  2. 魅力的なイメージの創出:黒人キャラクターは、エキゾチックで魅力的なイメージを創出するために使われた可能性があります。これは、商品に対する興味や好奇心を引き出す効果を狙ったものかもしれません。
  3. 国際的な視野:カルピスの創業者である三島海雲氏は、国際的な視野を持っていました。このため、国際的な要素を取り入れたデザインが選ばれた可能性があります。
  4. 特定の意図はない?:オットー・デュンケルスビューラー氏が黒人のイラストを使用した背景に、特定の意図やメッセージがあったかどうかは不明です。彼のデザイン選択は、単に芸術的な表現や創造性の一環であった可能性があります。
Ruby
Ruby
カルピスは日本初の乳酸菌飲料ということで、日本人だけではなく外国人でも美味しく飲めるということを表現したかったのでしょうね。

人種差別問題とカルピスロゴの変遷

黒人男性をモチーフとするカルピスのロゴの中止

1980年代後半になると、日本国内で人種差別に対する意識が高まり、「黒人差別をなくす会」などの団体から、このロゴがステレオタイプな黒人の描写であるとして人種差別的であるとの指摘がなされました。

これを受けて、カルピスは1990年にこのロゴの使用を中止し、現在では、「カルピスといえば水玉模様」となっています。

この変更は、「社会の変化」とともに企業が取るべき責任と対応の重要性を示す象徴的な出来事となりました。

現在のカルピスのトレードマークといえば水玉

カルピスのトレードマークである水玉模様は、その発売日である七夕(1919(大正8)年7月7日)に因んでいます。

七夕は日本の伝統的な祭りで、天の川(Milky Way)をテーマにしていますよね。水玉模様は、天の川を表現しており、カルピスの清涼感や爽やかさを象徴しています。

このデザインは、1922年に導入されて以来、カルピスのアイデンティティの一部となり、ブランドの認識と親しみやすさを高めるのに貢献しています。

水玉模様は、カルピスの伝統と日本文化への敬意を表しており、消費者に親しみやすいイメージを与えています。

カルピスのキャッチフレーズ

カルピスのキャッチフレーズは時期やキャンペーンによって異なることがありますが、特に有名なものには「カラダにピース。CALPIS」というフレーズがあります。

このキャッチフレーズは、カルピスが体に良い影響を与えることを強調し、心地よいリラックス感や健康への貢献を表現しています。

また、過去には「初恋の味」というフレーズも使用されていました。これらのキャッチフレーズは、カルピスのブランドイメージや消費者に対するメッセージを伝える上で重要な役割を果たしています。

「黒人差別をなくす会」とは?

黒人差別をなくす会」は1988年に大阪で設立された日本の団体で、子供向け絵本『ちびくろサンボ』の絶版など、黒人差別表現に対する抗議活動で知られています。

この団体は、漫画やアニメなどに対しても抗議を行い、『ジャングル大帝』や『オバケのQ太郎』などの作品が回収・絶版となりました。

その活動は国際的にも注目され、一方で称賛を受ける一方で、表現の自由を侵害するとの批判も受けました。また、漫画などでの黒人表現がタブー視されるようになる自主規制の傾向も生まれました。

カルピスの初期ロゴも、この団体の活動の対象となりました。

ステレオタイプが多くの人に取って不快な理由

黒人男性のロゴが黒人の方にとって不快だったのかどうかはわかりませんが、日本人のステレオタイプと言えば、小柄で眼鏡をかけた男性が、首からカメラを吊るしている姿が挙げられます。

  1. ステレオタイプの不正確さ:ステレオタイプは一般的に単純化された観念であり、実際の人々の多様性や複雑さを反映していません。このような描写は、特定のグループに対する誤解や偏見を助長する可能性があります。
  2. 歴史的な背景特に出っ歯や眼鏡などの特徴を強調した日本人のステレオタイプは、過去の人種差別的な描写に根ざしていることがあります。これらのイメージは、戦時中のプロパガンダなどで敵対的な意図を持って使用された歴史があります。
  3. 個人の尊厳への影響:ステレオタイプなイラストは、個人の尊厳やアイデンティティを侵害すると感じられることがあります。これは、個人が単なるステレオタイプに還元され、その個性や価値が無視されると感じるためです。
  4. 文化的感受性の欠如:ステレオタイプなイラストは、特定の文化や民族に対する理解と敬意の欠如を示していると見なされることがあります。これは、多様性を尊重し、異文化理解を深めるべき現代社会の価値観と矛盾しています。

北欧の女性の金髪、青い目、欧米人の高身長、おしゃれな服を着るイタリア人、紅茶を飲むイギリス人などは、人種差別的な要素や敵対心が一切なく、現在でも問題なくイラスト化されていますね。

現代におけるカルピスのロゴ

カルピスの例は、企業が時代の流れに応じて、社会的責任を果たし、公正で包摂的なブランドイメージを築くためには、時に勇気ある決断が必要であることを教えています。

カルピスの基礎知識

カルピス株式会社(1997年~)は、日本の乳製品メーカーであり、1916年に創業されました。

醍醐味合資会社という名称でしたが、1923年に カルピス製造株式会社に商号が変更され、2016年にアサヒ飲料へ吸収合併され、現在はアサヒグループの一部となっています。

カルピスとは?

  1. 歴史:カルピスは1919年に日本で初めて販売されました。創業者の三島海雲は、内モンゴルで酸乳に触発され、日本初の乳酸菌飲料を開発しました。カルピスの原型である「醍醐味」という飲み物は、1916年に発売を開始しています。
  2. 製造方法:カルピスは、脱脂乳を乳酸菌で発酵させ、砂糖を加えてさらに発酵させることで作られます。この独特の製造方法が、カルピス特有の味わいを生み出しています。
  3. 味と使用法:カルピスは、甘酸っぱい独特の味が特徴です。通常、水や牛乳で薄めて飲まれますが、そのまま使用したり、他の飲料と混ぜたりすることもあります。
  4. 商品展開:カルピスは、原液の他にも、希釈済みの飲料や炭酸飲料、フルーツ味、バターなど、様々な形態で販売されています。
  5. 国際展開:日本国外では「Calpico」という名前で知られており、世界中で愛されています。

カルピスの歴史

内モンゴルでの酸乳体験に触発された僧侶の三島海雲氏は、1915年に帰国後、日本初の乳酸菌製品の開発に着手しました。

彼は最初に「醍醐味」と名付けた乳酸発酵クリームを生産し、1916年に醍醐味合資会社を設立して販売を開始しました。

しかし、原料乳の高コストと輸送の問題に直面し、脱脂乳を活用した新製品「醍醐素」を1917年に発売しましたが、販売は伸び悩みました。

その後、東京大学研究室の協力を得て乳酸菌の研究を続け、1918年には「ラクトーキャラメル」を発売しましたが、夏の暑さで溶ける問題が発生し、生産を中止しました。

この経験を経て、三島は「醍醐素」に砂糖を加えて自然発酵させることで、新たな乳酸菌飲料「カルピス®」を開発しました。

カルシウムを加えることで商品価値を高め、1919年7月7日の七夕の日に販売を開始しました。

この飲料は、カルシウムの「カル」とサンスクリット語サルピスの「ピス」を組み合わせた造語「カルピス®」と命名されました。

ただし、アメリカでは、「カルピス」が牛の尿の意味の英語「cow piss(カウ ピス)」と聞こえることから、「CALPICO(カルピコ)」という名称で販売されています。

販売開始にあたり、広告展開や試飲会、店頭での販促活動を積極的に行い、「初恋の味」というキャッチフレーズを採用しました。これが「カルピス®」のイメージとして定着しました。

不況の影響で業績が悪化したため、商品ラインアップを拡充し、新たな需要喚起に努めました。

「カルピス®」のパッケージデザインは、七夕に発売されたことにちなみ、天の川をイメージした白地に青の水玉模様で、現在も受け継がれています。

このように、三島海雲氏の創造性と努力により、カルピスは日本の飲料市場において独自の地位を築き上げました。

カルピスの健康効果は?

  1. 乳酸菌の恩恵:カルピスは乳酸菌を使用して発酵させて作られています。乳酸菌は消化器系の健康をサポートし、腸内環境を改善する効果があるとされています。
  2. 免疫システムのサポート:乳酸菌は免疫システムをサポートする可能性があります。これは、腸内の健康が全体的な免疫機能に影響を与えるためです。
  3. 消化の促進:乳酸菌は消化を助け、特に乳糖不耐症の人にとって有益な場合があります。
  4. 栄養素の提供:カルピスは、カルシウムやビタミンなどの栄養素を含むことがあります。

カルピスを過剰に摂取することによる弊害

  1. 糖分の過剰摂取:カルピスには砂糖が含まれています。過剰な糖分摂取は、肥満、糖尿病、虫歯などのリスクを高める可能性があります。
  2. カロリーの過剰摂取:カルピスはカロリーが含まれているため、過剰に摂取すると体重増加の原因となることがあります。
  3. 栄養の偏り:カルピスの過剰摂取は、バランスの取れた食事に代わるものではなく、栄養の偏りを引き起こす可能性があります。
  4. 消化器系への影響:乳酸菌飲料を過剰に摂取することで、一部の人においては胃腸の不調や下痢を引き起こすことがあります。

カルピスロゴマークのまとめ

カルピスのロゴ変更は、単なるデザインの更新を超え、社会の価値観や文化的感受性への深い洞察を必要とする企業の役割を浮き彫りにしました。

この事例から、企業が時代の変化に敏感であり、多様性を尊重し、公正なブランドイメージを築くための努力がいかに重要であるかが明らかになります。

また、社会の変化に対応する過程での勇気ある決断が、長期的には企業の信頼とブランド価値を高めることに繋がることも示されました。

カルピスのロゴ変更は、企業が社会的責任を果たし、時代に合ったブランドイメージを築くための重要な教訓を私たちに提供しています。