力士の体脂肪率について関心のある方は多いでしょう。
平均としては、体脂肪率32.5%程度(2013年度・幕内力士25名の平均)なのですが、もちろんこれはあくまでも「平均値」となります。
力士には大きく分けて「あんこ型」と「そっぷ型」の二つの体型があり、それぞれ体脂肪率が大きく異なります。
また、全力士が無差別級となる相撲は、それぞれの戦略も大きく異なります。
体脂肪率とは?
体脂肪率とは、人の体重に占める脂肪の割合を示す数値です。
具体的には、体脂肪量(kg)を体重(kg)で割り、その結果に100を掛けたものが体脂肪率となります。
この数値は、健康状態や体型を評価する際の重要な指標とされています。
一般的に、体脂肪率が高すぎると、糖尿病や高血圧、心疾患などの生活習慣病のリスクが高まります。逆に、体脂肪率が低すぎると、免疫力が低下し、疲れやすくなる傾向があります。
そのため、適切な体脂肪率を維持することは、健康を保つ上で非常に重要です。
健康的な体脂肪率とは?(一般人の場合)
オムロンのサイトによると、一般に、健康的とされる体脂肪率の目安は、男性は10〜19%、女性は20〜29%だそうです。
軽度肥満 | 中等度肥満 | 重度肥満 | |
---|---|---|---|
男性 | 20%以上 | 25%以上 | 30%以上 |
女性 | 30%以上 | 35%以上 | 40%以上 |
体脂肪率とBMI(ボディマスインデックス)
体脂肪率とよく比較される数値がBMIです。BMIは、体重(kg)を身長(m)の二乗で割った数値で、肥満度を示します。
しかし、BMIが高いからといって、必ずしも体脂肪率が高いわけではありません。
筋肉量が多い場合は、BMIは高くなりますが、体脂肪率は低くなります。
筋肉は脂肪よりも重さがあるからですね。
力士の体脂肪率
力士の体脂肪率と他の種目のアスリートの体脂肪率を比較しよう!
他の競技のアスリートと比べて、力士の体脂肪率はどうなのでしょうか。
2013年12月に慶應義塾大学のスポーツ医学研究センターが調査した結果によると、幕内力士25名の平均の体脂肪率は32.5%でした。
幕内力士 25 名の平均身長は 186.3cm、平均体重 161.2kg、平均体脂肪率 32.5%、平均体脂肪量 52.9kg、平均徐脂肪体重は108.3kg でした。(慶應義塾大学スポーツ医学研究センター)※あくまでもこれは平均値となります。
力士の体型には「あんこ型」と「そっぷ型」があり、それぞれ体型を活かした闘い方をします。
柔道やレスリング、ボクシングは同じ体型の選手同士が闘いますが、相撲はもちろん体型別には分かれていません。
上の表は各種目のアスリートの理想の体脂肪率になりますが、この一覧表を見る限り、力士の平均体脂肪率はアスリートとしてはかなり高めだといえます。
体脂肪率の低い力士
たとえば、チェコ共和国出身の隆の山関の体脂肪率は8.7%(186cm・101kg)で、横綱千代の富士の全盛期の体脂肪率は10.3%(183cm、126kg)でした。
ほかにも現役時代の寺尾関は11%(身長185cm、体重116kg)、旭道山関は8%(182cm・107kg)とされています。
ちなみに横綱白鳳は25%(192cm・158kg)でした。
体脂肪率の高い力士
一方で、現役時代の小錦は体脂肪率が50%(187cm・275kg)だったとされています。ただし、現在の体重は153kgなので、体脂肪率もかなり減少していると考えられますね。
他にもブルガリ出身の碧山関が39%(191cm・189kg)、ブラジル出身の魁聖関38.9%(195cm・204kg)、舛ノ山関38%(179cm・173kg)。彼らは体脂肪率が高い力士となります。
確かに体脂肪率も高いですが、みなさん筋肉の量も100Kg以上あります。
朝青龍が“メタボ”に悩んでいることを明かした。このほど入った人間ドックでは「頭とか肺とか大丈夫だった」が、体脂肪率がかつての22%から33%に。「腹がポッタリで前ミツが取れないよ。肉の食い過ぎかな」と苦笑いを浮かべた。(引用元:スポニチアネックス・2008.9.11)
2008年9月の記事ですが、現役だった朝青龍関が「体脂肪率22%から33%に増えたため、前ミツが取りにくくなった」と明かしています。
このように、力士の平均体脂肪率は一般的なアスリートよりも高いのですが、力士によっては野球やサッカーの一流アスリート並みに低い場合もあります。
力士でも体脂肪率が40%を超えると、重度の肥満とされています。
体脂肪率が高すぎるとやはり健康上のリスクが考えられますが、力士の場合はその体型が戦術に活かされることも多いのです。
力士の体脂肪率の理想値は?
理想的な体脂肪率は、力士の戦術や体型、年齢、健康状態によっても変わります。
例えば、重量級の力士は、相手を圧倒するために高い体脂肪率が許されることもあります。
しかし、体脂肪率が高すぎると、動きが鈍くなる可能性があり、また健康面でのリスク(例:糖尿病、高血圧)も高まるため、適切な管理が必要です。
以上のように、理想の体脂肪率は多くの要因に依存するため、個々の力士が自身の体型や戦術に最適な体脂肪率を見つけることが重要です。
一般人にも言えることですが、体脂肪率が高くても、血糖値や血圧に影響が出ている人ばかりではありません。
とくに力士の場合は、身体の大きさも武器になりますので、全力士共通の理想の値を出すのは困難です。
競技性能とのトレードオフ: 体重が増えることで競技性能が向上する一方で、健康面でのリスクも増えるのは否めません。
「あんこ型」と「そっぷ型」の違いは?それぞれと体脂肪率との関係
力士の体型には大きく分けて「あんこ型」と「そっぷ型」の2つのタイプがあります。
体型は、力士の戦術に大きな影響を与えるため、非常に重要な要素となります。
あんこ型
- 由来:深海魚のアンコウの丸い体型から。
- 特徴:あんこ型の力士は、体脂肪率が高く、肉付きが良く大きな体を持っています。
- 戦術:体重を活かした力任せの戦術が可能。
- 健康面:糖尿病や高血圧などの健康リスクがある。足腰を痛めやすい。
- 力士例:北の湖、小錦、曙、高見山、魁皇、逸ノ城、照ノ富士、宇良ほか
そっぷ型
- 由来:ちゃんこ鍋のスープ(オランダ語ではソップ)から。体型がスープのダシを取った後の鶏ガラに似ていることから。
- 特徴:そっぷ型の力士は、引き締まった筋肉質で体脂肪率が低い傾向にあります。
- 戦術:スピードとテクニックを活かした戦術が多い。
- 健康面:筋肉が多いため、怪我のリスクが比較的低い。
- 力士例:旭道山、貴乃花、千代の富士、寺尾、舞の海、遠藤、炎鵬、翔猿、阿炎ほか
どちらの体型も一長一短があり、それぞれの特性を最大限に活かす戦術が求められます。
力士自身がどの体型に適しているのか見極め、そしてその体型に合った体脂肪率を維持することが大切ですね。
力士の体脂肪率の維持やコントロール
力士の食事について
力士の食事は、一般人とは大きく異なります。特に、力士が必要とするエネルギー量は非常に高いため、その食事内容もそれに合わせて調整されています。
力士は、11時と18時に2回度食事をとります。1日に摂る総カロリーは8,000キロカロリー!
成人男性が摂る1日の総カロリーは2,100〜2,700キロカロリーなので、いくら運動量が多いとはいえ驚きですね。
「ちゃんこ」は力士の食事という意味なので、鍋とは限りません。力士はカレーやラーメン、ハンバーグ、焼き肉など、何でも食べるようです。
ただ、お鍋は同じ部屋の力士との連帯感が生まれ、野菜、お肉、魚とバランスよく栄養が摂れるので、お鍋は代表的な「ちゃんこ」になるわけですね。
また、牛や豚など手(前足)が土についている食材よりも鶏の方が好まれます。
ご飯も丼鉢に5杯ほど食べることも珍しくないようです。
このように力士の食事は、高カロリー、高タンパク質、かつ栄養バランスを考慮したものが多いです。
しかし、相撲に適した身体を作るには、食事だけでなくお昼寝と運動も欠かせません。
相撲特有のトレーニング
トレーニング | 方法 | 効果 |
---|---|---|
四股(しこ) | 両足を広げ、一方の足を高く上げる動作を繰り返す。 | 足腰を鍛え、バランス感覚を高める。 |
すり足 | 足を地面に擦りつけながら前進する。 | 足の筋肉を鍛え、安定した立ち位置を確保する。 |
てっぽう | 鉄砲柱に向かって交互に力を込めて押す。 | 上半身と腕の力を高める。 |
股割り | 両足を広げて地面に座り、体を前後左右に動かす。 | 足腰の柔軟性を高め、筋力を向上させる。 |
腰割り | 両足を開いて立ちつま先を外側に向ける。腰を落としていく。 | 腰周りの筋肉を鍛え、安定した姿勢を保つ。 |
力士の体脂肪率を調べる計測器は?
大相撲の力士は、毎年慶應義塾大学のスポーツ医学研究センターでBOD PODを利用した身体測定を実施している
そのため、他スポーツの選手より体脂肪率は正確なはず
日馬富士(185cm135kg)の体脂肪率23%
隆の山(186cm 94kgk)の体脂肪率8.7%
は驚異的な数字 pic.twitter.com/ikJJvo1RpP— くうちゃん (@SHIBAINU_coo) June 25, 2023
体脂肪を計測するには、家庭用にも広く流通している体組成計(たいそせいけい) や、専用の計測器で身体の数ヶ所をつまんで、皮下脂肪の厚みを計る皮下脂肪圧測定が一般的ですが、力士の場合はさらに精度の高い「BOD POD」も使われています。
体脂肪測定器から出る、横綱 白鵬。14日目&千秋楽、売り切れ!大相撲一月場所の入場券はコチラhttp://t.co/sjcOwvFkqK #sumo pic.twitter.com/lkgyZFFx2k
— 日本相撲協会公式 (@sumokyokai) December 11, 2013
これは密閉空間に入って空気の圧力変化から体脂肪率を測定するもので、「空気置換法」を利用しています。公開された当時「小型の宇宙船のようだ」と話題になりました。
力士はこれらの計測器を用いて定期的に体脂肪率を測定し、その数値に基づいてトレーニングや食事の調整を行う必要があります。
力士と体脂肪率にまつわるQ&A
Q1: 力士の体脂肪率は一般人と比べて高いのですか?
A1: 力士の体脂肪率は一桁から40%とされており、一般人(男性の肥満傾向は20%以上)とは単純比較ができません。そっぷ型の小兵力士は野球やサッカーの選手と同程度ですが、あんこ型の力士は数字だけ見れば肥満に該当します。
Q2: 力士はどのように体脂肪率を管理しているのですか?
A2: 力士は高カロリー、高タンパク質でバランスの取れた食事と昼寝、トレーニングで体脂肪率をコントロールします。
Q3: 「そっぷ型」と「あんこ型」の力士では、体脂肪率に違いはありますか?
A2: 「そっぷ型」は筋肉質で体脂肪率が比較的低い傾向があり、「あんこ型」はより丸みを帯びた体型で、体脂肪率が高い傾向があります。
力士の体脂肪率はさまざま
この記事では、力士の体脂肪率について幅広く解説しました。力士の体脂肪率は平均32.5%程度ですが、個々によって大きな違いがあります。
とくに「あんこ型」と「そっぷ型」の体型によって、体脂肪率が大きく異なります。
また、力士がどのように食事やトレーニングで体脂肪率をコントロールしているのか、具体的な方法も紹介しました。
力士という独特の職業において、体脂肪率の管理は非常に重要ですね。